亡國の孤城 ~フェンネル・六年戦争~
マリアは嬉しそうに微笑んだ。
「あら本当?総隊長の許可なら、使わない訳にはいかないわね。少なくとも、足を引っ張らないで済むわ」
「………」
マリアのこういう態度に、イブとダリルは何だか釈然としない様子だ。
「……マリア…無茶…しないでね…」
不安そうな表情でイブは呟いた。
「……大丈夫よ。皆の役に立つなら、何だってするから、ね?」
優しい、母親の様な暖かい笑み。
今はそれが、痛々しく映った。
「……なるべく……使わない様にな………良いな?分かっているとは思うが……“解放”はお前の命を削る、諸刃の剣だ…」
………悲しい、残酷な運命を伴う諸刃の剣。
彼女はそれを、躊躇うこと無く扱うのだ。
大丈夫よ、とマリアは再び笑った。
「死にそうになったら、敵を全滅させるから」