僕のお母さん



ルミさんは、僕のことを見る。僕は、おろおろしたあと、下を向きながら言った。





「仕事……頑張ってください。」





ルミさんは、僕の髪をくしゃくしゃと撫でて、ニッコリと笑った。





「おう。」





僕は、先生に連れられて、応接室的なところに入った。僕は、緊張をしていた。別に、挨拶してしまえば、すぐ終わることなのだが、なんか緊張する……





「さっきの人、綺麗だったね。お姉さん?」





男の先生が、僕に聞いてくる。お姉さんって言った瞬間、僕は、笑ってしまいそうだった。ルミさんは、確かに若く見えるけど、きっと二十代後半くらいだろう。間違ってたら、嫌だから本人には言わないけど……





「いえ、母です。」





僕が言うと、先生は長細い目を大きく開けて、イスから転げ落ちた。そんなに、驚くようなことだろうか……だって、僕が十歳なんだから、十八くらいに産めば、若いうちに小学生の息子は出来る。しかも、今どき僕とルミさんみたいな親子は、珍しいわけでもないだろうに……





「じゃあ、椿くんは、四年三組で挨拶してね。」





僕は、ゆっくりと頷いた。チャイムが鳴ったら、僕は、四年三組に行って、挨拶をして、机に座って……ああ、なんか家に帰りたくなってきた。





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