僕のお母さん



寂しかった。僕が、学校から帰ってきたのは、三時。もう二時間は一人でいた。でも、もう低学年でもないんだし、二時間くらいなんてこと無いと思っていた。でも、案外施設では、一人になることは無かったから、一人が寂しかったのかもしれない……





僕は、ルミさんに抱きついた。僕にもし、家族がいたら、一回でいいからやってみたかった。特に、お母さんに一度でいいから、抱きついてみたかった。施設にいたときは、僕より小さい子がいたから、そんなわがまま聞いて貰えなかったから……





ルミさんは、一瞬すごい驚いて、動いていなかったけど、すぐに僕のことを抱き締めてくれた。僕は、また頬に暖かいものを感じた。





「ルミさん。どうして、僕の名前は椿なんですか?」





よく考えたら、ルミさんが知るはず無いよな……だって、ルミさんがつけたわけじゃないのに。でも、ルミさんはちゃんと答えてくれる。





「なんでって……あんたを拾ったのが、五月だったからって聞いたけど……」





五月。僕がすみれ園に預けられた時。まだ寒い夜に、毛布にくるまれて、生後一年も経ってない赤子を持った若い女の人が、僕を連れてきたらしい。その女の人は、僕の名前を教えないで、いなくなってしまったらしくて、園長さんが困ったらしい。





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