その腕で抱きしめて
あたしは映画館に入り映画が
はじまるのを待った。
ギリギリに誠哉は
「ただいま」
って、帰ってきた。
「遅かったね」
あたしはいろんな意味をこめて言うと
「結構、並んでたから。ん、これでいい?」
って。
心臓がぎゅーってなって……
渡されたレモンティのペットボトルを握った。
「…ありが…と」
あたしはレモンティをずっと見て
頑張って涙をこらえる。
すぐ、始まって暗くなったから助かった。
映画を見ててもさっきの
楽しそうな二人が浮かぶばっかで………
レモンティは 飲めないまま。
途中で誠哉は あたしの手を握って来る。
だけどあたしは胸がぎゅーって締めつけられ
涙が出てくる。
分からないように拭き…
考えないようにしよう、って決めた。