飴のち、×××【完】
顔を上げると、ヘッドホンを首に掛けた隣の席の奴が立っていた。
……奴が自分から人に声を掛けるなんて珍しい。
いつもあのヘッドホンをつけて一人音楽を聞いてるから。
まるで周りとの関わりを避けるように。
奴は俗に言う一匹狼というのだと思う。
「だったら何?」
「いや、無いなら送ってやろうかと思って」
……は?
今"送ってやろうか"って言った?
早く帰りたい私にとってその言葉自体はとても嬉しいんだけれども。
奴がそう言ったということが信じ難くて、私の頭はフリーズしてしまった。