♥恋と事件簿♥
第一部 ②〜命日~
4月8日、悠呀の命日。
喪服代わりの黒のロングワンピースを着て、ジャケットを羽織って家を出た。
買っておいた花と、斗真から託されたビールを持ってストリームに乗り込む。
今日だけはと、タオルにしまってある写真をクリップで中間のドリンクホルダーに固定した。
あいつがしてたように。
お墓までは高速で2時間位。
休憩もなしに走り続けた。
早く話したいとか。
会いたいとかより。
1年に1回の機会を無駄にしない為に。
時間が許す限り、居たいんだ。
私たちのデートが、そうだったように。
忙しかった私たちには、会える時間が貴重で。
大切にしていた。
悠呀に惚れたきっかけは、父親と同じ関西弁に、親近感があった。
本庁を初めて訪ねた時に、困ってた私に声を掛けてくれた。
お互い、一目惚れだったのかな。
お礼を言った後、連絡先を交換。
“「愛依の声聞いたら、また頑張れる。はよ会いたいな」”
それから会えない日の休憩時間に、決まってそう電話を繋けて来てた。
携帯に疎い私は、メールを保護する事も。
電話を録音しておく事も出来ず、何回後悔しただろう。
耳に残る声が、掠れて来てる。
胸に残る記憶は、色褪せそう。
もう二度と、聞けない。
見れない悠呀の姿と声。
斗真に、携帯について教えて貰ってれば良かったと、後から思った。
思い出より、後悔が大きい私を。
“馬鹿やな”って、笑ってくれるかな……。