♥恋と事件簿♥
「あのー……、お名前を――…!!?」



「「「『……――ッ!!』」」」



「……っ……。貴方の目の前で、死なせて下さい……っ!それが無理なら……っ、私は貴方を刺して、捕まりますぅ゛……ッ!!」



名前を訊ねようとした瞬間、紙袋から包丁を取り出し、自身の喉元に突き立てた女性。

シーンと静まり返るフロアに響く女性の泣き叫ぶ声。



「落ち着いて下さい?うちの主任が何か?」



女性に近い斗真が、1歩近付きながら声を掛けると、大粒の涙を溢しながら、私に包丁を向けて斗真へと向いた。



「“何か”……?何かじゃない……っ゛!娘が何をしたのっ!斗志樹君が好きだっただけじゃない……っ!なのに、主人も政界から追放なんて、私の家族が何をしたのよぉ゛……っ!!」



「小宮刑事の、お母さんですか」



「娘に会えない親の気持ちがわかる……?廃人になった主人の姿を見る妻である私の気持ちがわかるかしら……。家族を壊されて、苦しい気持ちがわかる……っ゛!!?」




「言いたい事はわかりました。ただ、包丁は置きましょう」



「一生……忘れられない傷をつけてやる……っ!!」



…親が親なら、子は子だ。
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