♥恋と事件簿♥
「真剣なんです!!」



「それならシラフの時に言えば良いでしょう。だいたい私は……」



企みがないなら良いけど、私は何を言おうとしたのか。

自分で言っといて、続きの言葉が出て来ない。

けど、自然に身体が振り向いた。

私に彼氏が居ない理由。

作らない理由を知ってる人が、斗真やここに居ない七星を除いて1名。

そして、私は本庁で課長の婚約者という役をしてあげた借りがある。

借りを返して貰うチャンスだ。



「――課長と、まぁね」



「か、課長と……;;」



課長の顔を見れば、私と守川の顔を見るも何事もなかったように、焼酎を呑む。

守川は苦笑いを浮かべたまま、私たちから離れる。

斗真までも驚きを隠せてない中、課長が私との距離を埋めて来た。

氷をカラコロと音を起てるように、グラスを回す課長。



「お前、職場の人間にあんな発言して良いのか」



小声で言いながら、私が横目で課長を見ると、顔を近付けて来た。



「斗志樹さん?お酒臭いですよ」



顔を手で押し退け、私はニコリと微笑んだ。

わざとらしい笑みに、斗真は嘘だと気付いただろう。

課長は「つれねぇな」と、正面を向きながら呟く。

私はため息を吐き、煙草を手に取り、紫煙が人に飛ばないように吸う。



「一本くれ」



「どうぞ」



課長は空だったらしい煙草の箱を潰しながら、私の煙草を取り出した。

守川の視線を感じる中、私は逃げるように天井を見上げた。
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