♥恋と事件簿♥
「何で我が家に涅槃像?」
「それは酷くない?」
実家のリビングの絨毯に寝そべり、テレビを見て過ごしてると母親が帰宅。
右手に鞄、左手にはスーパーの袋。
父親が求めた理想がここにはある。
お手伝いさんや執事なんていらない。
仕事以外では、父親と母親でありたいという小さな理想。
「今日は休みだったわけ?」
「吐いて早退」
「何で吐いたの」
私でもわからない事を訊かれると、返事に困る。
私は首を傾げながら、「さぁ」と答えた。
母親はキッチンに立つと、食材を冷蔵庫にしまいながらも、心配そうに私を見て居る。
愛情を感じるこの瞬間、不謹慎だけど幸せ。
昔から、この時ばかりは沢山甘えれる。
「お祖母ちゃん元気?」
「お祖父ちゃんは元気」
…何、その答え;;
私は“お祖母ちゃん”と訊いたのに。
まぁ、お祖父ちゃんはしょっちゅう父親と会ってるから、嫌でもわかるけど。
あの似た者同士。
何で他人なのか、たまに謎。
でも、お祖父ちゃんが元気ならお祖母ちゃんは元気だろう。
少し歳が離れてるし、お祖父ちゃんの心に秘められた愛により、明るく元気に、いつまでも若々しく居る人だ。
お祖父ちゃんが元気なのに、お祖母ちゃんが元気じゃないわけない。
「そうだ、愛依」
「何?」
「新聞記者から、取材依頼とかあった?」
「何もないけど」
「何で私たち親子だけ……」
母親は意味のわからない事を言いながら、手鏡で頬の具合を見てる。