♥恋と事件簿♥
「離せや!人が居んねん!私たちに助けを求めてねん……っ!!」



「だとしても、これじゃあどうしようもないだろッ!!」



「そんなら見殺しにするんか!!」



炎を前に叫び合う私たち姉弟の周りに、消防士たちが集まって来た。

行動派な私に対し斗真は頭脳派で、対立は多かったけど、こんなに激しいのは高校生の時以来ではないだろうか。



「……署長、行きましょう」



「皆さん、姉貴に流されないで下さい。危険過ぎですから」



「確率を無駄にしたら山下署長の名を汚してしまいます。貴方たちの、ひいお祖父さんの名を」



…苺のお祖父ちゃんの……。

私は突入の準備を始めた消防士たち。

署長さんに頭を下げた。



「第一小隊、突入準備。第二小隊は援護放水の準備だ!応援部隊は圧力15で、南東から放水!!絶対、救出するぞ!!」



署長の声が響き渡る。

メガホンを下ろすと、私にニコリと笑う。



「君は、野神圭ーケイーさんたち野神家の人々に似てるな」



圭叔父さんは、母親の従兄。

消防庁長官にまでなった人。



「山下の祖父は、ただの苺好きなでしたけどね」



「若い頃の活躍を、君は知らないだけだよ。何十年も前にあった史上最悪のビル火災で、1人だけ命を懸けて全員を救助した歴史を」



「「――…!!?」」



初めて聞いた過去に、私は斗真と顔を見合せた。

苺のお祖父ちゃんに、そんな過去があるなんて。

誰も何も言わなかったけど、そんな偉大な人だったんだ。
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