♥恋と事件簿♥
「主任、ちょっと」
「はい」
午後、斗真たちとお昼の休憩から戻って来ると、私だけ課長に呼ばれた。
課長室に入ると、鞄に荷物を入れて出掛ける準備をして居る。
「どちらかにお出掛けですか?」
「今から本庁に行く。同行しろ」
「は?」
「良いから来い」
…何なの、この男。
鞄は持ってた為、課にだけ声を掛けて課長の後ろを追った。
てっきり車は別かと思えば、課長のBMWに案内された。
「貴方って、課長のわりに計画性ないんですね」
「何が言いたい」
「私にも仕事があります。ですから、次からは早目に言って下さい」
今日は仕事が少ない方だから、許せるけど。
無言の車内。
ラジオすら流れてない。
「訊きたい事がある」
「何ですか」
重い空気を裂くように、課長が口を開いた。
課長の横顔をチラリと見て、また視線を前に戻す。
「何でキレたような顔をしてるんだ」
いつかは誰かに訊かれると思った質問。
しかし、解答はまだ見付かってない。
悠呀の死を。
恋人の死を、簡単に言えるわけがないから。
「元からです」
「警視総監は、そんな仏頂面ではないだろ」
「…………」
だったら、真実を言えと?
そんなの、絶対に嫌だ。