♥恋と事件簿♥
私は課長をシカトして、到着するなり顔パスで本庁に入った。

他の人みたく、私服だろうと名札を首から下げる必要はない。

警視総監の部屋に行くのに、エレベーターで指紋認証があるけど、私の指紋も登録済み。



「何階に行くんですか」



「刑事課。後、これから俺が何を言っても頷け」



「何でですか」



「俺に見合うのも、事を終わらせられるのも、お前だけだからだ」



全く意味がわからない。

見合うって、私を利用するつもりだろうか。

警視総監の娘で。

祖母や母親の容姿を継げた私。

見れば容姿端麗な課長には、見合うだろう。

でも、残念ながら中身が伴っていない。

お互いに酷い(むごい)性格なんだから。

犬猿なんて言葉が、可愛い位。



「黒田さん――ッ!!」



そんな事を考えてると、エレベーターは刑事課のある4階に着いた。

降りるとすぐに女が現れ、課長に抱き着いた。



「離れろ」



「嫌ですわ!久しぶりに、お目に掛かれたんですから!」



大したお嬢様。

私とは全く違うタイプ。

元の私でも、自分から抱き着いて行くような積極性はない。

素直になれなくて。

自分で寂しさを膨らませるタイプだった。
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