♥恋と事件簿♥
一服しようと、鞄から黒のポーチを取り出し、煙草とライターを出す。



「……クールキング?」



すると、課長に手を握られた。

驚きを隠しながら見上げれば、課長も同じ煙草を、胸ポケットから出した。

何故、彼が驚いたかもわからないまま、腕が解放される。

首を傾げながらも、ベンチに腰を掛ける。

鞄から携帯を出し、父親に先程の件と口裏合わせをして貰えるようにメールをした。



「なぁ」



「何か?」



「お前、やっぱり昔は笑ってたよな。確か“お祖母ちゃん似”だって」



「…………」



何で課長が、その話を知ってるの……?



「何の話ですか」



過去を知る人が、身内以外に居るとは思わなかった。

悠呀は本庁の人間で、木ノ島で私たちの関係を知る人間は、居なかった筈。

お葬式で顔を合わせてたとしても、3年も前の話。

覚えてる人が居るだろうか。



「惚けるならそれで良い。帰るぞ」



まだ半分しか吸ってない煙草を灰皿に捨て、課長は喫煙ブースを出た。

私は煙草をキツく吸い込み、後ろを追い掛けて走る。

課長の背中が寂しそうなのは何故か。

―――私はまだ知らなかった。

悠呀の死の意味を。

課長との繋がり、これからを……。





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