♥恋と事件簿♥
木ノ島町内ではなくとも、近くに居たと思うと腹が立って来た。

路駐される車。

母親が深呼吸をしながら車を降り、親父の腕に掴まって先を歩いて行く。



「どちら様ですか?」



後ろを歩いてると、兄貴が押した呼び鈴によって玄関から出て来た5~60代の女性。

原田実咲の母親か、兄貴に気付くと玄関を全開にした。



「斗志樹君よね?今朝の事かしら。ごめんなさいね。実咲がどこからか彼女さんの事を聞いたらしく、パニックになって――…」



「パニックが何?貴方、この期に及んで自分の娘を庇ってるんですか!?」



兄貴に弁解する声を遮り、母親が怒鳴った。



「娘が何ですか!それに貴方は誰なんですか?」



負けじと返して来た原田の母親に、親父が自己紹介をし、義息子の事を説明。



「そんな……。けど、それが事実でも、娘は事件とは……!」



「首謀者ですよ。お宅のお嬢さんは」



親父の冷静さは逆に恐ろしく、原田の母親は顔面蒼白。

兄貴に目配せをすると、時計を確認した。



「で、でも!斗志樹君も知ってるわよね?娘があの時、どんなに悲しんでたか……。そんな娘を首謀者にするなんて……」



「原田さん。義息子さんから聞いた話と、俺が知る話は違います。実咲さんは、悠呀とは何の関係もない、ストーカーみたいに迫ってただけ。でも義息子さんは難波に悠呀を取られたと言ってたんです。任意で同行し、お話を聞きたいと思ってます」



兄貴も時計を見ながらも、任意同行を求めた。
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