龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
言えば言えるじゃないの


辺りはしんと静まり返っている。


「ちょっと、松もっちゃん」

亜由美の声がした。

「そのデカイの何とかしなさいよ。邪魔よ。飼うの? 屠殺場送りにするなら手伝うけど」


「えっ? あっ! 飼います! いえ、付き合います」


松本さんの言葉に、固唾を呑んで見守っていた生徒達がドッと笑った。


「加奈ぁ」

長谷川くんが泣きながら松本さんに抱きついた。


「泣かないの。バカね」

松本さんは抱きつかれたまま、優しく背中をさすった。

「ゴメンね。今日はバレンタインデーなのに何にも用意してないわ」


「何もいらない。俺といて」


あれ? どこかで聞いた台詞


「明日、二人でコンビニに行くといいよ」

悟くんが陽気に声をかけた。

「チョコレート半額のはずだから」


わたしは思わず笑ってしまった。

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