龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「それって、どうなのかな?」

「何が?」

「人はつらい思いを乗り越えて、大人になっていくものでしょ?」

「失恋以外にもつらい事はいっぱいあるよ。そっちを乗り越えれば?」

「そうか」

「志鶴って妙なところで真面目だよね」


そうかな


しばらくして亜由美が戻って来て、わたし達は学校を出た。


「今日は真っ直ぐ帰るのね?」


亜由美と美幸にからかわれたけど、今日は寄り道しない。

家に帰って圭吾さんにバレンタインデーのプレゼントを渡すんだもの。

喜んでくれるといいな


ウキウキしながら家の玄関に入ると、和子さんが待ち構えていた。


「ただいま。圭吾さん、家にいる?」

「いらっしゃいますが、その前に彩名様のアトリエへおいで下さい」


あー、プレゼントを預けてるんだった。


「その前に伯母様にご挨拶――」

「奥様もアトリエにいらっしゃいます」


えっ? 珍しい

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