龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「掃除するところは、もうないぞ」
わたしはうなずいた。
「住んでいなかったから、きれいなものよね」
「そうだな」
写真の中から、笑顔のママがわたし達を見ている。
「ママとはどこで知り合ったの?」
「お前が今住んでいる町で。大型台風での災害の取材に行ったんだ。ママは大学の助手で、地元の歴史を研究していた」
「一目惚れ?」
「いいや。お嬢様然としていて、生意気な娘(こ)だと思った」
親父は懐かしそうに笑った。
「でも真っすぐで、気持ちの優しい人だった。笑顔が美しかった」
本当ね
「お姉さんの嫁ぎ先だと言って、ママはよく羽竜家に出入りしていた。不思議な家だったよ。台風が直撃したというのに、あの町は被害がなかった。隣町でも、羽竜一族の地所だけは無傷だった。すぐ横で大きな土砂崩れがあったというのに」
「分かるわ」
だって龍神様の土地だもの。
「普通の家ではない」
「知ってる」
わたしはうなずいた。
「住んでいなかったから、きれいなものよね」
「そうだな」
写真の中から、笑顔のママがわたし達を見ている。
「ママとはどこで知り合ったの?」
「お前が今住んでいる町で。大型台風での災害の取材に行ったんだ。ママは大学の助手で、地元の歴史を研究していた」
「一目惚れ?」
「いいや。お嬢様然としていて、生意気な娘(こ)だと思った」
親父は懐かしそうに笑った。
「でも真っすぐで、気持ちの優しい人だった。笑顔が美しかった」
本当ね
「お姉さんの嫁ぎ先だと言って、ママはよく羽竜家に出入りしていた。不思議な家だったよ。台風が直撃したというのに、あの町は被害がなかった。隣町でも、羽竜一族の地所だけは無傷だった。すぐ横で大きな土砂崩れがあったというのに」
「分かるわ」
だって龍神様の土地だもの。
「普通の家ではない」
「知ってる」