龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
参拝の列はノロノロとしていたけど、やがてわたし達の番になった。


柏手を二拍

手を合わせ頭を下げる。


みんなは何をお願いしているんだろう?

圭吾さんは今頃、神社にいるんだろうな


「しっかし寒いな!」

お参りを終えると、航太が言った。

「どこかで缶コーヒーでも飲むか!」


賛成!


みんなでぞろぞろと参道を引き返す。

鳥居を一つ抜け、もう一つ外側の鳥居に差し掛かった時、巫女姿の女の人が鳥居の前にいるのが見えた。


「もし、龍のおひい様」

巫女さんが呼び掛けた。


ひょっとして、わたし?


わたしが立ち止まると、巫女さんはうなずいた。

「わざわざお運びいただき、ありがとうございます。主より御礼の品をお渡しするようにと」

差し出された手の平には、真っ赤な折り紙の花が乗っている。


「ごめんなさい。お気持ちはありがたいんですけど、他所の神様からいただいちゃいけないの」

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