龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「何から何まで申し訳ありません。では、お言葉に甘えて」
常盤さんは胸ポケットから名刺入れを取り出して、親父に名刺を渡した。
「わたしは常盤と申します」
「ほう。常盤道三先生の秘書――ご子息ですか?」
「ええ。息子と言っても妾腹になりますが」
『しょうふく』って何?
「母は正式な奥さんではなかったんだ」
わたしが分からないと悟って、常盤さんが言った。
つまり、愛人の子?
「いや、ご立派なものですよ」
親父が言う。
「確か腹違いのご長男は、全く畑違いな遊び人でしたよね。あなたが実質的な後継者だ」
「詳しいですね」
「ああ申し遅れました。わたしはこういう者です」
親父が差し出した名刺を見た途端、常盤さんは『えっ』と声を上げた。
「明和日報の三田さんって、あの……」
「ええ。五年ほど前に、お父上に関する暴露記事を書いて危うく首が飛びそうになった、その三田志郎です」
常盤さんは胸ポケットから名刺入れを取り出して、親父に名刺を渡した。
「わたしは常盤と申します」
「ほう。常盤道三先生の秘書――ご子息ですか?」
「ええ。息子と言っても妾腹になりますが」
『しょうふく』って何?
「母は正式な奥さんではなかったんだ」
わたしが分からないと悟って、常盤さんが言った。
つまり、愛人の子?
「いや、ご立派なものですよ」
親父が言う。
「確か腹違いのご長男は、全く畑違いな遊び人でしたよね。あなたが実質的な後継者だ」
「詳しいですね」
「ああ申し遅れました。わたしはこういう者です」
親父が差し出した名刺を見た途端、常盤さんは『えっ』と声を上げた。
「明和日報の三田さんって、あの……」
「ええ。五年ほど前に、お父上に関する暴露記事を書いて危うく首が飛びそうになった、その三田志郎です」