龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「お嬢さんは、僕にとっては鬼門らしい」
常盤さんは苦笑した。
「羽竜家と縁故を結ぼうと持って行った縁談を阻まれた上に、お父上が腕利きのジャーナリストとは!」
「今は海外勤務なので安心していいですよ」
「海外? どちらに?」
親父が赴任先を告げると、常盤さんは納得したようにうなずいた。
「お嬢さんが羽竜家にいるのは、それで。そこでは連れて行く訳にはいきませんよね」
そんな危ないところなの?
「報道に携わる者としては、やり甲斐のある場所ですよ。あなたはどうです? 将来は政治家でしょう? 常盤先生の敷いたレールを走るだけで終わるつもりではないですよね」
それは質問ではなく、断定だった。
常盤さんは困ったように曖昧な笑みを浮かべたけど、すぐに親父と政治談議を始めた。
熱っぽく語る常盤さんは、いつもの気取った顔ではなく、若く理想の高い人だった。
巧みに話しを引き出す親父もまた、仕事をしている時の顔だと思った。
「いやぁ、メモを取りたいくらいですよ」
親父が残念そうに言った。
「もちろん、これはオフレコですよね」
「ええ。父に知れたら大変だ」
「いつの日にか、あなたが大臣の椅子に座るまでこの記事は取って置きますよ」
常盤さんは苦笑した。
「羽竜家と縁故を結ぼうと持って行った縁談を阻まれた上に、お父上が腕利きのジャーナリストとは!」
「今は海外勤務なので安心していいですよ」
「海外? どちらに?」
親父が赴任先を告げると、常盤さんは納得したようにうなずいた。
「お嬢さんが羽竜家にいるのは、それで。そこでは連れて行く訳にはいきませんよね」
そんな危ないところなの?
「報道に携わる者としては、やり甲斐のある場所ですよ。あなたはどうです? 将来は政治家でしょう? 常盤先生の敷いたレールを走るだけで終わるつもりではないですよね」
それは質問ではなく、断定だった。
常盤さんは困ったように曖昧な笑みを浮かべたけど、すぐに親父と政治談議を始めた。
熱っぽく語る常盤さんは、いつもの気取った顔ではなく、若く理想の高い人だった。
巧みに話しを引き出す親父もまた、仕事をしている時の顔だと思った。
「いやぁ、メモを取りたいくらいですよ」
親父が残念そうに言った。
「もちろん、これはオフレコですよね」
「ええ。父に知れたら大変だ」
「いつの日にか、あなたが大臣の椅子に座るまでこの記事は取って置きますよ」