龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
わたしはうなずいた。

「落としたらベタベタになるもの」


「じゃあ、それ置いて僕にキスして」


今、散々したじゃない


わたしは圭吾さんの膝から滑り下りて、サイドテーブルの上にカップとスプーンを置いた。


はい、OK――って、違うでしょ……


「圭吾さん」

「ん? 何?」

「『よし、準備できた!』って感じでキスできない」


圭吾さんは笑いを堪えているように咳ばらいをした。


「分かった。精一杯ロマンチックなムードを作るから、後でキスして」


『うん』って答えたけど、

やっぱり、わたしって女の子としてダメダメじゃない?


「取り合えず戻っておいで」

圭吾さんがそう言って自分の横を指差した。

「僕のいないところで、どんな悪さをしていたのか教えてくれ」


「失礼ね。いい子にしてたわよ」

わたしは圭吾さんの横に座って、肩に頭を乗せた。

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