龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「圭吾さん」

わたしは圭吾さんの背中に向かって話し掛けた。


「ん? 何?」

「クリスマスの少し前に、わたしに『おまじない』だって何かしたわよね? あれ、何だったの?」

「ああ、あれ? 離れている間に君が見た夢だよ」


夢? 


「あのきわどい夢?」

「君が僕を忘れないようにと思って。でも、知らないものは見せられないんだ。だから、君の見たのはお子様バージョンだ」


あれで?


圭吾さんはドアの前まで行って振り向いた。

「ああ、言い忘れてた。僕はしっかりと18禁バージョンで同じ夢を見たよ」


ええっ! ひどっ!


ドアが閉まる直前、圭吾さんが小さく歌う声が聞こえた。


――圭吾さんの羊、カワイイね



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