龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「志鶴」

いきなり圭吾さんに呼び掛けられて、ドキッとした。

返事をするのをためらっていると、

「眠ってるのか?」

圭吾さんはそう言って、わたしの頭のてっぺんに頬を寄せるようにして、そっと抱きしめた。

あまりに優しい仕草と温もりに胸がいっぱいになる。

ママが死んでから、こんなにわたしに近づいた人はいない。


なのに


「君はいつになったら僕を受け入れてくれる?」


圭吾さんのつぶやくような言葉がわたしの胸を
刺した。


わたしと圭吾さんでは、気持ちに差がありすぎる。

親父はそう言ってなかった?


わたしは圭吾さんが大好きで、誰よりも近くにいるのに、圭吾さんはそれで十分じゃないの?


愛してるわ

なのに、わたしの心はあなたに届いてないの?


気のせいって思うようにしていたけど、本当はわたし気づいてた。

時々、圭吾さんは思いがけない時に寂しそうな顔をする。


愛は


愛は、どうすれば相手に伝わるの?

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