龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
うつむいたわたしの耳に

「やるね。一年坊や」

と、悟くんが言うのが聞こえた。


何、見物してんのっ!


「見ちゃダメでしょ」

わたしは悟くんの制服を引っ張って小声で言った。


「公共の場でキスする方が悪いじゃない」

悟くんは面白がるように言った。

「意外性のある取り合わせだね」


そうね

そういう事もあるのね

わたしと圭吾さんが、お似合いのカップルに思えてきたわ


「あんたの言うことなんてこれっぽっちも信用できない」

松本さんの声が聞こえた。


「おい、加奈」


あれ?

二人ともこっちへ来る?


顔を上げると、泣き出しそうな顔の松本さんと目が合った。


「あの子とは何でもないんだって」

後を追ってきた長谷川くんが軽い口調で言う。

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