龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
話の半分は分からない


「要するにね」

彩名さんが口を挟んだ。

「彼女がデザインした服をお人形に着せるの」


「そして、同じ服を初夏のコレクションとして、うちの会社が売り出すのよ」


少し分かったわ


「わたしは何をすればいいんですか?」

「採寸させて」


へっ?


「あなた、人形にちょうどいい体型よ」

「胸が小さいからとか?」

「当たり。わたし、ヨーロッパのアンティークドールのような服を考えているの。ナイスバディじゃダメなのよ」


見せられたスケッチブックのスタイル画は、いわゆるロリータファッションっていうやつだった。


「うわっ、かわいい!」

「でしょ? どんなのが好き?」

「うーん、これかな? でも、黒じゃなくて……」

「白? ダークグリーンもいいかなと思ってるんだけど」


「紫ね」

彩名さんが言った。

「志鶴ちゃんのイメージで作るなら紫がいいわ」

< 62 / 125 >

この作品をシェア

pagetop