龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「うちの一族では、彼女の遊び相手というのは非常に名誉な事なんだ」

悟くんは愛想よく言った。

「僕は将来、圭吾の右腕となる。お見知り置きを。覚えておいて損はないよ」


「羽竜の右腕となるのは君のお兄さんじゃないのか?」


「兄は結婚相手を選んだ時点で、第一線から退いたのさ」

悟くんはカウンターの椅子を引いてわたしを座らせ、自分も横の椅子に腰掛けた。

「さてと、じゃあオススメの品を見せてくれる?」


詐欺師


この町でも、商業施設の不動産は羽竜一族の持ち物が多い。

さりげなく羽竜の名前を出すことで、悟くんはその場を支配してしまった。


もう、やりすぎよ!

丁重な接客に、わたしの方が緊張しちゃう


コロン? トワレ? パフューム?

ちんぷんかんぷん

違いは何?

アフターシェービングローション

ああ、それなら分かる


「あ、これ圭吾さんが使っているやつ」


「ダメだよ」

悟くんが笑った。

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