龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「君の好きな香りのを買わなきゃ、選ぶ意味がないだろう?」


そうか


お姉さんにサンプルの匂いを嗅がせてもらって、わたしは柑橘系のほのかな香りがするローションを選んだ。

それと、ピンクのリップグロスを一本。

家に帰ったら、絶対に『何を買ったの?』ってきかれるもの。


「しづ姫って、香水類つけないね」


悟くんにそう言われて、支払いをしていたわたしは深く考えずに答えた。


「だって一緒に寝てるから、圭吾さんに匂いが移っちゃう気がして」


常盤さんが喉を詰まらせたような声を出した。


あれ? わたし、今すごいコト言わなかった?


悟くんはゲラゲラ笑っている。

お店のお姉さんはさすがにプロで、顔色ひとつ変えない。


常盤さんの連れの女性が、目を丸くしてわたしを見ていた。

「羽竜本家に花嫁候補が来ているって噂、本当なのね」


そうよ


「こんな子供だなんてビックリだわ」


大きなお世話よっ!

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