龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
圭吾さんはそっとわたしを抱きしめた。
「生霊の顔を見た?」
「ううん。ほら、写真を撮る時に逆光だと顔が真っ黒になるでしょ? そんな感じだった」
「わたしは見えたわ」
美幸が言った。
「ショートカット、赤いプラスチックフレームのメガネ。唇の左下側にホクロ。年は三十代後半ってところかな」
「あの一瞬でそれだけ見えたの?」
悟くんが驚いて言った。
「滝田はもともと『遠見(とおみ)』の家よ。それに羽竜の血が入ってるんだもの」
美幸は肩をすくめた。
「でも、恨みつらみって顔じゃなかったわね」
「で、常盤の名前を口にした?」
「うん。『あなた道隆くんの恋人?』って。心あたりある?」
「ある」
えっ、本当?
「ただ、どうしてなのか理解できない」
圭吾さんがわたしの髪を撫でる。
あの……ですね
家じゃないんで、そろそろ放してもらえたらなー、とか――言い出せない感じね
「生霊の顔を見た?」
「ううん。ほら、写真を撮る時に逆光だと顔が真っ黒になるでしょ? そんな感じだった」
「わたしは見えたわ」
美幸が言った。
「ショートカット、赤いプラスチックフレームのメガネ。唇の左下側にホクロ。年は三十代後半ってところかな」
「あの一瞬でそれだけ見えたの?」
悟くんが驚いて言った。
「滝田はもともと『遠見(とおみ)』の家よ。それに羽竜の血が入ってるんだもの」
美幸は肩をすくめた。
「でも、恨みつらみって顔じゃなかったわね」
「で、常盤の名前を口にした?」
「うん。『あなた道隆くんの恋人?』って。心あたりある?」
「ある」
えっ、本当?
「ただ、どうしてなのか理解できない」
圭吾さんがわたしの髪を撫でる。
あの……ですね
家じゃないんで、そろそろ放してもらえたらなー、とか――言い出せない感じね