龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】

「悟、呼び出して封じるぞ」

圭吾さんが言った。


「いいの? 生きてる人間を封じたら、最悪、意識は戻らなくなるよ」


そんなのダメよ


「このままでは志鶴がもたない」


まだ頑張れる


「OK でも、まずしづ姫をどこかに座らせた方がいい」


悟くん、止めないの?


「あっちにベンチがあるわ」


美幸? 圭吾さんを止めて

――ああ だめか

羽竜一族は当主の決定には異を唱えない。

もしも圭吾さんを止められる者がいるとするなら、それはわたしだ。

「圭吾さん」

寒気がする。

「こんな寒いところに彼女を閉じ込めないで」


「志鶴? すぐに楽になるから」

「聞こえないの? 彼女をここから出してあげて。寒くて、暗いわ」

「彼女は自分で自分を縛っているんだ。そこから彼女を出してあげられるのは、結局のところ彼女自身なんだ」

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