龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
「本当に?」

「本当よ。愛してるわ」


口に出した途端、体が急に楽になった。


「捕まえた」

圭吾さんがフーッと大きく吐息をついて、わたしを抱きしめた。


「見事な泣き落としだね」

悟くんが手を叩いて言った。

「情けなさといったら国宝級だったよ」


へっ? 何?


「うまく行ったな――志鶴、もう大丈夫だよ。生霊との同調は外せたから」


「圭吾さん、今のひょっとして演技ぃ?」

同情して損した!


「どうかな」

圭吾さんは少し目を伏せて微笑んだ。

「案外、本音かもしれないよ」


もう騙されないわよ――たぶん



電話をして戻って来た常盤さんは、顔色が悪かった。

「本当にメグは具合が悪かったよ。流産しかかって入院してた」

「本人と話せたか?」

圭吾さんの問いに、常盤さんがうなずく。

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