龍とわたしと裏庭で⑤【バレンタイン編】
いつもはもう帰る時間なのに、通いのお手伝いさんが二人、残ってくれていた。

それと、住み込みの和子さん。

みんなニコニコしている。

わたしは、最初に渡されたレシピにザッと目を通した。

今までお菓子と言えるものを作ったのは、ホットケーキくらいのものだ。


――えーと、クルミを刻む。チョコを湯煎で溶かす


「湯煎って何?」


どうやらお湯の入ったボウルの熱で、上に乗せたボウルのチョコを溶かすらしい。

なるほど

小麦粉とお砂糖の分量を量って……と


「これでいいの?」

「お上手ですよ」


励ましのお言葉ありがとう


わたしの危なっかしい手つきにみんなハラハラしてただろうけど、手は出さなかった。

失敗しても成功してもいい。

大切なのは、わたしが圭吾さんのためにどれだけ頑張ったかなんだから。

成功した方がいいに決まってるけどね


天板にオーブンペーパーを敷いて、その上にケーキ生地を流し込む。


おっ 案外簡単。いけるかも。

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