君とこんぺいとう
「お久しぶりです」

茜さんはそう言うと明るく笑った。

冬に会って以来だったが、ずいぶん顔色も良くなった気がした。

「…お久しぶり」

私はぎこちなく挨拶した。

「里中、こんなところで会うとはな」

田代くんは私の手を握ったまま、隼人に声をかけた。

「…そうだな」

隼人は無表情に私たちを見ていた。

「桜が見たくて病院抜け出して
隼人に連れてきてもらったの。
萌さんたちもデート?」

「デートなんかじゃ…」

そう言いかけた私を田代くんの声がさえぎる。

「俺はデートのつもりだけど?」

「…え?」

思いがけない言葉に私は田代くんを仰ぎ見た。

「じゃ、そういうわけで俺たちもう行くから。
里中、またな」

田代くんは一方的にそう言うと
私を連れて歩きだした。

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