君とこんぺいとう
しばらく歩いたところで田代くんは私を振り返った。

「大丈夫か?」

「うん…」

別れてから何か月か経つというのに
隼人と茜さんが一緒にいるところを見ただけで
私の心はかき乱された。

黙り込んだ私を田代くんは覗き込んだ。

「小川、泣いてる?」

「え…?」

私はそう言われて、初めて自分が泣いていることに気付いた。

「ごめん…」

自分の涙に驚いて、顔を隠そうとした時だった。

「田代くん…?」

私は気がつくと田代くんの腕の中にいた。

「もう忘れろよ」

田代くんの声が耳元で聞こえた。

「里中のことはもう忘れろ」

我に返って彼の腕から逃れようとする私を
田代くんはますます強く抱きしめた。

「お前のそばには俺がいるから」

< 105 / 138 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop