君とこんぺいとう
午前中、フルパワーで仕事をこなすと
同期の加奈子とお昼を食べに外に出た。

加奈子は、会社でただ一人、私が相談できる相手だ。
不器用な私を理解し、時には悪いところを指摘してくれる。

「萌、また飲み会行かなかったんだって?」

加奈子に突然言われて、私は呆気にとられた。

「なんで知ってるの…?」

「朝、駅で田代に会ってさ。
その時に新しく配属された人の話が出て
歓迎会のことを聞いたってわけ」

「あ…そう」

私が気まずそうに視線をそらすと
加奈子が言った。

「前から言ってるでしょー。
最低限の飲み会には参加しろって。
苦手なのは分かるけど、そういうの出るのも大事だよ」

「だって私お酒飲めないし。
飲み会のノリって苦手で」

加奈子は呆れたように言った。

「まあ、気持ちは分かるけどね。
でも歓送迎会とか忘年会とかだけでも参加するように!」

「…努力します」

身を小さくする私に加奈子は言った。

「で、里中くんって同級生だったの?」

その名前が出た途端、私は固まった。

「それも田代くんに聞いたの?」

「そうよ。高校の同級生に会社で会うって
微妙な気分よね」

加奈子は私の気持ちを知ってか知らずかそう言った。

「高校の時とはお互い変わっちゃってるわけだし。
もし昔好きな相手とかだったら、複雑よね」

敏感な加奈子は挙動不審な私を見て、目を見開いた。

「まさか…そうなの?」

私はしどろもどろになった。

「そういうわけじゃ…」

「いーや、図星でしょ。
萌が嘘つくときは分かるの、私」

加奈子はそういうと腕を組んでうなった。

「その状況はきついかもね。大丈夫なの?」

「分かんない…」

私は大きく溜息をつくと
昨日里中との間にあった出来事を話した。

「萌って本当に不器用だね…」

私は加奈子の言葉に肩を落とした。

「まあ、でも気にしても仕方ないし。
萌は会社で今までどおりにしてれば。
彼だってそのうち今の萌に慣れるよ」

「うん…」

私はうなずくしかなかった。


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