君とこんぺいとう
「お前、俺のこと避けてるだろ?」

お店で向かいに座った田代くんに単刀直入に言われて
私は答えにつまった。

「避けてなんか…」

「いや、避けてる」

きっぱりと言い切られた私は
観念して溜息をついた。

「…ごめん。どうしていいか分からなくて」

「そんなことだろうと思ったよ」

田代くんは私を見て小さく笑った。

「俺もいきなりキスなんかして悪かった」

突然キスされた時のことを思い出し
頬が熱くなる。

「本当だよ。田代くんがいきなりあんなこと…」

「でも俺、本気だから」

「え…?」

驚いて顔をあげると、田代くんはまっすぐに私を見ていた。

「お前のことが好きだ。だから真剣に考えてほしい」

「田代くん…」

「まだ里中のことを好きなのは分かってる。
でも試しに俺と付き合ってみないか?
付き合ってみてもダメだっていうなら俺も諦める」

「試しって…そんなことできないよ」

私の言葉に田代くんは言った。

「どうして?お前、俺のこと嫌いか?」

「嫌いじゃないけど…」

「それなら、やってもみないで諦める前に
俺にチャンスをくれないか?」

「田代くん…」

「入社してからずっと好きだった。
何もしないでこのまま諦められない」

田代くんのまっすぐな気持ちがうれしかった。

こんなにも自分を思ってくれる彼となら
新しい未来を始められるかもしれない。

隼人が茜さんと歩きだした今
私も前へ進むべきなのかもしれない。

私はそう思った。



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