君とこんぺいとう
「ありがとう」

コーヒーカップを受け取って田代くんは微笑んだ。

いつも隼人が座っていた場所に
今は田代くんが座っている。

「なんか緊張するな。小川の部屋にいるなんて」

「どうして?」

隣に座った私を見つめて田代くんは言った。

「ずっと好きだった相手の部屋にいるんだ。
緊張して当たり前だろ?」

『ずっと好きだった相手』

その言葉にどんな顔をしたらいいのか分からない。

思わず目をそらした私の頬に田代くんの手が触れる。

「萌」

名前を呼ばれて驚く私に
田代くんは照れたように笑った。

「ずっと名前で呼びたかったんだ」

そう言って、額と額をくっつける。

「萌、好きだよ」

私の唇に軽く口づけると
彼は私を抱きしめた。

「田代くん…」

田代くんの大きな手が私の両頬を包み
重ねられるたびに口づけは深くなる。

いつの間にかソファに押し倒されていた私は
とまどいながらも彼の熱いキスを受けいれていた。

「…んっ」

首筋に移動した彼の唇の熱に
体が反応する。

その時、急に私の携帯電話が鳴った。

ビクっとして体を震わせた私を見て
田代くんは唇を離した。

「…ごめんなさい」

謝る私に、彼は少し笑って言った。

「いや、いいんだ。
もう少しで自分を止められなくなるところだった」

田代くんの言葉の意味に気づいて
恥ずかしさで顔を上げられなくなる。

「電話、出たほうがいいんじゃないか?」

私は体を起こすと
テーブルの上にある携帯を手に取った。

着信画面を見て、思わず息をのみそうになった。

電話は隼人からだった。


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