君とこんぺいとう
次の日、お昼過ぎに隼人はマンションまで迎えに来てくれた。

「車買ったの?」

黒い車に乗って現れた隼人に私は驚いて聞いた。

「ああ、最近ね。前から買おうと思ってたし
病院に行くのも車のほうが便利だから」

まるで茜さんのために車を買ったように聞こえて
私の胸はチクンと痛んだ。

「…そう」

「でも、誰かを乗せるのは萌が初めてだけどな」

その言葉に助手席に座った私は思わず隼人を見た。

「茜さんは…?」

「ああ、茜は車に乗ると酔うから」

「そうなんだ」

初めて車に乗せるのが私だと言われて
気分が浮き立つのを感じた。

「昨日は急に電話してごめんな。
誰かと一緒だった?」

車を運転する隼人の手に見とれていた私は
何気なく聞かれた問いにうつむいた。

「あ…うん」

「もしかして…田代?」

「え…?」

驚いた私に、隼人は前を向いたまま言った。

「なんとなく、そんな気がしたんだ。
この前、花見の時に2人が一緒にいるのを見たから」

「田代くん、時々誘ってくれるの。
昨日も出かけて、家まで送ってくれたところだった」

私は正直に話した。
会社でも田代くんと私が付き合っているという噂があると
加奈子から聞いていたからだ。

きっと隼人の耳にも入ったのだろう。

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