君とこんぺいとう
加奈子とランチに行く約束をしていた私は
昼休みに入ると待ち合わせした店へ向かった。

先に店にいた加奈子は
私を見るなり開口一番こう言った。


「萌、なんかお化粧変えた?」

私は彼女の鋭さに内心、舌を巻いた。

「…うん」

「やっぱり。
何か心境の変化でもあった?」

加奈子の追及をかわせるわけもなく
私は正直に白状した。

「うそっ!昨日そんなことがあったの?!」

加奈子は心底驚いていた。

私から恋愛話を話すなんて
これまで一度もなかったのだから無理もない。

「萌にも春が来たんだね。
私うれしいよ。本当によかった」

加奈子が心からそう言ってくれているのが分かる。

「うん、ありがとう」

私も素直に返事をした。

「それにしても、里中って見る目あるね。
萌を好きになるなんてさ。
里中狙いの女子って結構いるから
みんながっかりするだろうな」

加奈子の言葉に
アイスティーを飲んでいた私はむせそうになった。

「そんなに里中って人気あるの…?」

加奈子は呆れたように言った。

「知らなかったの?
入社して以来、ファンがどんどん増えてるよ…。
まあ、あのルックスに性格もいいし。当然だよ。
ていうか、萌はそういうことにうとすぎる」

「松田さんだけじゃなかったんだね。全然知らなかった」

私は自分の鈍感さを改めて思い知った。




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