君とこんぺいとう
翌朝、目が覚めると隼人の腕の中にいた。

私は穏やな彼の寝顔を見つめる。

会社にいる時のしっかり者の彼ではなく
同級会で友達とじゃれあっている彼でもない。

私だけに見せてくれたあどけない顔。

「…かわいい」

サラサラで茶色がかった彼の髪を
起こさないように優しく撫でる。

「隼人…ずっと一緒にいてね」

私はそう言って彼の胸に頬を寄せた。

「それ、プロポーズ?」

突然、頭の上から声が降ってきた。

「えっ…」

顔を上げると優しい瞳と目が合った。

「起きてたのっ?」

「いま起きた」

隼人はそう言うと私を抱きしめる。

「まさか萌から逆プロポーズされるとは」

うれしそうに言われて、私は焦った。

「ち…違うってば。プロポーズってわけじゃ…」

「俺はそう受け取った」

隼人はジタバタする私を見て笑うのをやめない。

「もうっ。いつから起きてたの?」

「『かわいい』って言われたあたりから。
かわいいなんて言われてもうれしくないぞって思ってたら
『ずっと一緒にいて』だもんな。
萌って意外に積極的」

「それ、ずっと言うつもりなら、
もう知らないからっ」

私は恥ずかしさが限界に達して隼人に背を向けた。

隼人は私を後ろからふわりと抱き寄せる。

「ごめん、萌の言葉があんまりうれしかったから」

笑うのをやめて、真剣につぶやく。

「俺は萌のそばにいるから。ずっとそばにいる」

「うん…」

うれしくて涙が出そうになった私は
振り返るとまた彼の胸に顔を埋めた。

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