君とこんぺいとう
エレベーターに乗り込むと
2人だけの空間に私は急に緊張した。

「身長、伸びたんだね。
ほんとにびっくりした」

やっと話題を見つけた私は彼に言った。

「昔はお前と同じくらいだったよな。
かっこよくなった?」

私がその言葉に呆れて黙っていると里中は笑った。

「お前、いま呆れただろ?」

私は肯定も否定もできず、困って笑った。

「お前って本当に分かりやすい。
反応が素直だよな。全然変わってない」

何気なく言われた
『素直』『変わってない』という言葉が胸に刺さる。

「素直なんかじゃない。私、変わったの。
高校の時とは違うから」

里中のほうを見ずにそう言うと
先にエレベーターから降りた。

「え、小川…ちょっと待てよ」

里中が慌てて私を追ってきた。

「なんだよ、急に。
俺、何か気にさわるようなこと言ったか?」

里中は足を止めない私に追いつくと顔をのぞきこんだ。

(かまわないでほしい…)

会社で人との関わりを避けてきた私は
仕事以外での人との接し方を忘れてしまっていた。
突然現れた里中に対しても、それは同じだった。

「疲れてるだけ。もう帰る」

私は彼にそう言うと、ちょうど来たタクシーに乗り込んだ。

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