空Ⅱ
よく見ると少し息が上がっていて、汗ばんでいた。
「俺らの大切な奴を刺そうとしてんじゃねぇよ‼︎」
バキィ…
悠真の右ストレートが綺麗に決まれば、男はドサッと倒れ込んだ。
「帰るぞ」
「ちよっと…!」
どこか怒ったような声をした悠真に腕を引かれて小走りになりながら着いて行く。
家まであと少しの見慣れた道に来た時、やっと悠真が歩くのをやめた。
「なんであんな遠回りしてたんだよ」
「悠真には関係ない」
向かい合うように立っている悠真を睨めば、眉をひそめたのが見えた。
「お前…なに怒ってるんだよ」
「別に怒ってねぇよ」
今、コイツと話すとグチャグチャした気持ちが溢れ出そうなんだよ…。
私は思わず目を逸らした。
「じゃあこっち見ろよ」
「嫌だ」
「いいからこっち見ろって…!」
顔を掴まれて、無理やり悠真の方を向かされる。
「お前、俺がどれだけ焦ったかわかってんの?
喧嘩してるときの声聞こえてなかったら刺されてたんだぞ?
俺は…大事な奴を失いたくないんだよ…」
泣きそうな顔で話す悠真を見ていたら、我慢していたものが溢れてしまった。