雨とバンビ。




やっぱり忘れるなんて無理だよ。



輝く瞳を見てしまった。



艶やかな髪に触れてしまった。



滑らかで白い手と、絡み合った。



真っ赤な唇と重ね合った。


その全てを忘れて、だなんて無理。



「……私、忘れない」



唐突に言った私に、バンビは目を見張った。



「ずっと忘れないから」



その言葉に、バンビの目は涙の膜を張ってゆく。



「……ありがとう」



聞き終わる前に、バンビの唇を塞ぐ。



私とバンビの、最後の一時だった。




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