鶴見の鳩
菓子を口に放り込んで間もなく、

何処からか十数羽の鳩が飛来して

きた。

彼等の内の大部分は白と黒との薄

汚い斑模様だったが、その中に一

羽だけ全身ほぼ真っ黒の鳩がいた

。周りと同じく、彼も地面に落ち

たゴミをついばんでいた。だが彼

には一つだけ違う所があった。

彼は奇妙な動きを見せていた。自

分が塵をつついている所へ別の鳩

が来ると、決って彼はそれを譲り

渡すのだ。更に他の鳩たちが集っ

ている所には決して寄り付かず、

何時も隅へ隅へと移動しているの

だった。

何故そういう動きをするのか。私

は段々彼に興味が湧くのを感じつ

つ、ひたすらにこの鳩を観察して

いた。


< 3 / 10 >

この作品をシェア

pagetop