鶴見の鳩
この時、私を悲劇が襲った。

私の口に今にも入ろうとしていた

ビスケット菓子が、ほろりと舌先

から地面に転がり落ちたのだ。

あまりの突然のことに、私は一瞬

唖然としたが、すぐに、自分自身

に対するえも言われぬ苛立ちに襲

われた。

しかしそれは次の瞬間、強い好奇

心によって消し去られた。

私の落としたビスケット目当てに

、鳩たちがわらわらと集まってき

たのである。

私は時の経つのも忘れて、この鳩

たちによる「おしくらまんじゅう

」を注視した。

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