極上お姫様生活―2―【完】
「んじゃ、明日な」
「あ、はい、また明日」
櫻田君にもう一度お礼を言って、あたしは扉を閉めた。
「……」
気まずいし、どんな顔していいのか分からない。でも…彼に逢いたい。
「八木原斎は、来なかったわよ」
え…?
部屋の中で優雅に紅茶を飲んでいた翼に駆け寄る。
「学校に来なかったんですか」
「おまけに寮にもいないわ。あいつ、どこ行ったのかしらね」
淡々と言ってのける翼とは対照的にあたしの頭は混乱した。
寮にもいない…?じゃあどこにいるの?誰かと一緒なの?
次から次へと湧き出る疑問。翼は全てお見通しと言う風に、ふふふと笑った。
「蒼空の頭ん中、あいつの事ばっかり」
「っ、だって…!」
言い返す言葉が見つからない。翼の言った事は紛れもない事実だから。
「まぁ気になるのも分かるけど、今は勉強に集中しないとね。今回赤点取ったら卒業できないかもよ」
ニヤリと不敵に笑う翼。
「が、頑張ります」
卒業できないのは困る、非常に困る。
とりあえず一週間後に迫った試験の事だけを考えようと、楽しそうに微笑む翼を見て思った。