極上お姫様生活―2―【完】
「蒼空、もう少しこっち来いよ」
「え!?」
いつの間にか腰に回された手が、グイとあたしを引き寄せる。持っていた紅茶が溢れてしまうので下手に抵抗できない。
「ちょっと……!!何もしないって、」
「何もしねぇよ。ただ、お前の温もり確かめたいだけ」
楓汰の切ない声が、いやに部屋に響いた気がした。
テーブルの上にマグカップを置いて楓汰を見上げる。目が合って、さっきとは違う沈黙が流れた。
「悪かった……ひどいことして」
ひとつひとつ区切るように、ゆっくり言葉を紡いでいく。静かな部屋に、楓汰の声だけが反響する。
「うん、」
「好きだった、俺はただ、好きなだけだったのに」
楓汰は視線を落としてあたしのお腹あたりに顔を埋める。ビクリ身体が跳ねて慌てて引き剥がそうとしたけど、
「……っ、」
彼は小刻みに肩を震わせていた。―――泣いてる、の?
「楓汰……っ」
気付いたら、引き剥がすどころか離れないように強く抱き締めていた。
だって、楓汰が、ずっと憎んでたはずのあの須賀楓汰が……あたしの腕の中で小さく震えながら泣いてるんだもん。
「ごめん、ごめん……っ」
放っておけるわけないよ。