極上お姫様生活―2―【完】
開いた扉に手を掛けたまま、あたしの顔を見て笑う。何も変わらない、優しい笑顔だった。
「何だよそんな顔して。…まぁ久しぶりだもんな」
なに、何でなの。
何でそんな風に笑えるの?あたしの事嫌いなんでしょ?
「んな泣きそうな顔するな。……入っていいか?」
グルグルと頭が回って思考が止まる。入る?八木原君があたしの部屋に入るの?
「え、あ、う。…ど、どうぞ」
言ってから気付いた。ダメじゃん。
「あっ、ごめんなさい…今日は、ちょっと」
「勉強会だろ?俺も参加する。…ダメか?」
予想外すぎる八木原君の発言に、もう何も考えられなくなった。
「ダメ…じゃないです」
今ここに彼がいるだけでいい。笑ってくれるだけで嬉しい。
でも―――聞きたい。
「八木原君、あの」
「待って。その先は言わないで」
勇気を出して紡いだ言葉は、簡単に八木原君に遮られた。