極上お姫様生活―2―【完】
「風の噂……?」
あたしが眉を寄せるのと同時に、つい、と顔を上げる楓汰。
「お前が、他の男と付き合ってる……って」
「は!?」
あまりにもベタな勘違いに、思わず気が緩む。
だってそんな事実あるはずない。あり得ない。
「楓汰まさか、そのこと真に受けたんじゃ……」
「俺だって信じてなかった!でも、でもお前……俺のこと拒んだじゃん」
「拒んだ?」
首を傾げて疑問を投げ掛けると、楓汰がいきなりあたしの腕を掴む。
「っ、え」
身体がふわり浮いたと思ったら、その瞬間背中に柔らかい痛みを感じた。
―――ベッド。
スプリングが弾む音とともに、あたしに馬乗りになってくる楓汰。
ひやり、嫌な汗が伝う。……なに、考えてんの。
「楓汰っ!ちょっと、やだ離してよ!!」
楓汰は黙ったままあたしの耳の横に両腕をつく。逃げる隙もなく、楓汰の顔がグッと近くなる。
「や、なに……」
目を合わせているのが辛くてふいと顔を背ける。楓汰は無防備になったあたしの耳元に口を寄せて、
「キス、させてくんねぇ?」
とびきり甘い声で囁いた。
ゾクゾクと何かが背筋を駆けるのを感じた。