極上お姫様生活―2―【完】
「だ、駄目に決まってるでしょ!!ちょっと……っ」
楓汰の胸ぐらを力いっぱい押し返そうとすれば、その手を掴まれる。
「あ、……ッ」
もはや暴れることすらままならない。抵抗できない、このままじゃ……
やだ、やだ……!!
「……やっぱり、お前は泣くんだな」
ふと頭上から寂しげな声がして、あたしは堅く閉じていた目を恐る恐る開けた。
楓汰はさっきの涙なんて比にならないくらい悲しそうに眉を下げていた。絶望の色を浮かべながら。
「あの時も、お前はそうやって嫌がった。……それがすげぇ辛くて、」
楓汰があたしから離れてベッドの端に座る。あたしもそれに合わせて身体を起こした。
「その時思ったんだ。やっぱりお前には既に他の男がいて、だから俺を拒んだんだって」
「違うよ……っ!そんなわけないじゃない!!」
浮気なんてできるはずない。あたしはただひたすらに楓汰が好きだったんだから。
「……そう、だよな。でも俺すげぇ幼稚だったから。裏切られたって思ったら、もう何を信じればいいのか分からなくなっちまって」
絡まっていた糸が解けていく。あたしたち、すれ違ってただけだった。