極上お姫様生活―2―【完】
「ほんとは分かってんだよ、俺だって」
「え……」
「お前は優しいから俺の話ちゃんと聞いてくれるって分かってたし、だからといってもう一度俺と付き合う気はないのも分かってた」
楓汰は、全部分かってた、と笑って見せる。それが本当なのかは分からないけど、あたしは黙ってることしかできなかった。
「ほんの少しの可能性を信じて伝えてみただけだよ」
「あたしは嬉しかった。気持ち、伝えてくれてありがとう」
あたしと楓汰の、複雑に絡み合っていた糸がゆっくりと解けていく。
ずっと胸の奥深くにあった黒いもやもやが、すっと消えた気がした。
過去の傷は、なくなることはないけど癒すことはできる。もう昔を思い出して泣いたりしないよ。
「……もし、辛いことがあったら何でも相談しろよ?」
「うん、ありがとう」
「特にあの八木原斎って奴!あいつに泣かされたらすぐに俺を呼べ」
楓汰はダン、とベッドに拳を叩き付ける。
「大丈夫だってば」
多分、泣いちゃうかもしれない。だけど絶対諦めたりしないから。
「じゃあ…………帰るか?」
「……、うん」
あたしたちはぎこちなく立ち上がって部屋を出た。